ここに掲げるのは、山形県庄内地方の方言地理学的調査の結果である。江戸時代に庄内藩鶴岡で『浜荻』という名の方言集が作られた。他地域の『浜荻』と区別して『庄内)浜荻』と呼ばれる。その収録項目のうち約100項目について、1969年に庄内地方一円と新潟県北部の方言分布調査(言語地理学的調査)が行われた。『浜荻』に記された語形はコンピューターにかけて、多変量解析法(林の数量化第3類)を適用し、結果を報告した(井上1977)。またその結果の地図の一部は論文として報告した(井上1985、2000、2003)。
しかし大部分の項目は未公開だった。下図はすぐにできたが、きれいな図に清書する時間がなかった。当時は、スタンプを押すか、レトラセットという一種のシールを貼る手法で、時間のかかるものだった。今は鑓水兼貴作成のプログラムを使えば、手書きの記号をきれいな記号に置き換えられることもあり、下図をそのまま公開することにする。下図では、『浜荻』に記された語形を視覚的に目立たせるために、できるだけ黒の■を用いた。
1969年の現地面接調査の項目や地点の選定について、詳しくは井上を参照されたい。平均70歳が対象で、大正以前に生まれた人である。外住3年以内の男性が原則である。
調査から40年以上経ち、今は得られない情報になった。なおこの言語地理学的調査の後、同じ庄内地方でグロットグラム(地理×年齢図)調査を行った。この結果も一部が論文・著書として公表されたのみである。
参考文献
井上史雄(1977)「方言の分布と変遷」『岩波講座日本語 11 方言』(岩波書店)
―――(1985)『新しい日本語 ――《新方言》の分布と変化』(明治書院 )
―――(2000)『 東北方言の変遷』(秋山書店)
―――(2003)『 日本 語 は年速1キロで動く』 講談社現代新書
国立国語研究所(1953)『地域社会の言語生活---鶴岡における実態調査』秀英出版
堀季雄(1767)『(庄内)浜荻』
三矢重松(1930)『荘内語及語釈』(刀江書院)所収
佐藤武義他(2000)『近世方言辞書』(港の人所収)
三矢重松(1930)『荘内語及語釈』(刀江書院)